蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

2011-01-01から1年間の記事一覧

沈黙(10)

刈屋蘭堂の甥とはいったい誰なのか。『沈黙』を書いているのはいったい誰なのかと、私はふと考えることがあります。そして、乱穂先生と呼ばれる人物が『私』を名乗り書いているのではと思うのです。屋根裏に籠って小説を書く男は、実は小説だけではなく日記…

他21、「坊や大きくならないで」

1969年4月、高野悦子は高石友也の歌う「坊や大きくならないで」のレコードを買った。そしてそれを聴きながら「ベトナムであの歌をうたっている数多くの女達がいるということを、一体どう考えたらよいのか」と日記に書いた。自殺するほぼ2ヶ月前のことである…

沈黙(9)

Point Bonita Lighthouse ポイントボニータ灯台はマリン郡の太平洋岸、ウェストマリン地区にあります。ゴールデンゲートブリッジを渡って左方向に行ったところです。 「ヘイ、ガール。元気かい」 突然、見知らぬ男が声をかけてきました。 二人は気晴らしに太…

沈黙(8)

Mt.Tamalpais 私にはタマルパイス山はこんな風に見えたのです。 「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてます」 奥から大柄な黒人女性が現れました。そしてモデルに近寄り、 「おおっ、まさこ。よく来たわね、まさこ」 と言って抱き締めます。大きな胸と…

沈黙(7)

ゴールデンゲートブリッジ 雲のような霧の上に橋柱がわずかに見える。 モデルの降り立った空港はロサンゼルスではなくサンフランシスコだった。従って彼女がサンタモニカへ行くことはなく、別の場所になると思われる。しかしここではサンタモニカに敬意を込…

沈黙(6)

ラフ画(2) 例の持ち出した誰の絵とも分からぬものに手を加えた。相当に薄くなっていたので、まずはBと2Bで濃くすることから始めた。絵の6、7割はデッサンで決まってしまうと思っているから、もうこの絵は出来上がったも同然なのだと、素人の私は泰然とした…

沈黙(5)

ラフ画 この絵も土蔵文庫にあったもので鉛筆のラフ画である。 暇を持て余した時、私は良くここを訪ねる。ここには歴代の店主たちが思いのままに集めたものが展示されているが、それぞれが好き勝手に集めたもので系統だってはおらず、また大して価値のありそ…

Edesu35、歌は流れる

パステル、色鉛筆 思い出となれば、みんな美しく見えると良く言うが、その意味をみんなが間違えている。僕らが過去を飾り勝ちなのではない。過去の方で僕らによけいな思いをさせないだけなのである。思い出が、僕らを一種の動物である事から救うのだ。記憶す…

Edesu34、時は流れる

パステル、色鉛筆 森昌子「十周年記念リサイタル」 プルーストの『失われた時を求めて』は、有限ではあるがその端には行くことのできない三次元の宇宙を、その端を求めて延々と辿る物語のようである。それはエッシャーの永久に流れ続ける滝のようであり、無…

Edesu33、愛は流れる

鉛筆、ケント紙 森昌子「愛は流れる」 作詞:なかにし礼、作曲:浜圭介 無心にブランコを漕いだ純真な少女は、心の奥に秘め続けた情念を露わにする。 青春の熱唱から不倫の愛までは序章にすぎない。 森昌子ここに無常の愛を歌う。 森昌子、遂に本気になった…

沈黙(4)

別の一枚 もう一枚あったこの絵は、鉛筆の下書きの上に直接、背景は色鉛筆で人物は顔面だけがパステルで塗られたもので完成していない。何が気に入らなかったのか、描きかけのままである。構図やポーズは「沈黙」と同じであるから同じ時のものだろうが、眠っ…

沈黙(3)

「本当に忙しない人だけど、あれでなかなの好人物なのです。私は全く頭が上がりませんけども、世間の評判とはずいぶん違う人なのです。あなたも色々聞かされてきたと思いますが、どうでしたか会ってみて、印象が違ったのではありませんか」 乱穂先生がいなく…

沈黙(2)

原画 ] この絵は蜂太郎本舗土蔵文庫にあったもので、実際はこのように色褪せております。誰がいつ頃描いたものか、パステルと色鉛筆で書かれているのですが、サインも日付もありませんのではっきりしません。ただ、裏側に「沈黙」「ロンブローゾ」「エジソン…

沈黙(1)

開かれた眼はどこかうつろで潤んで見えました。笑みを浮かべた口元もこころなしか引きつっているようで、女性は疲れているようでした。 「こんなことでいいのかね、秋葉君」 シャツはコートのようになってるし、モデルは誰だかさっぱりだし、さらに、せっか…

他20、歌碑「鳩ポッポ」

これは浅草寺境内にある童謡「鳩ポッポ」の歌碑です。由来は、東くめが浅草寺境内で鳩と戯れる子供たちの様子を詞に書いたことにあり、昭和37年、東くめ86歳の時に建立されたそうです。東くめの出身地新宮市にもあるそうですが、浅草寺の碑文にはこう書かれ…

Edesu32、パステル

パステル、色鉛筆、ボールルペン、鉛筆 パステルで描いてみた。何とも凛々しくて、カメラを引くと、膝の横に柔道着があったりする講道館に通う女三四郎のイメージだが、それでも日本の芳醇は感じられるだろうか。パステルで細かい描写は無理なので、色鉛筆、…

Edesu31、青い海

鉛筆、ケント紙 「書を捨てよ町へ出よう」と、寺山修司は言う 「ドアを半分あけといてくれ そこから青い海が見えるように」とも言う それに、 「かつて、君が遊んだ青い海が…」と、付け足す者がいる ドット柄はビーズ玉のようになったが 君はまだ若いし 入道…

他19、「松葉の流れる町」について

小説「松葉の流れる町」を、現在の3章まで別ブログにまとめました。非公開ですこしずつ直していたもので、まだ完成ではありませんし、何ともこころもとない文章なのでオススメはできませんが、興味のある方はリンク集「松葉の流れる町」からご覧ください。 …

Edesu30、扉をあけて

鉛筆、ケント紙 寺山修司「海の詩」より ぼくが死んでも歌などうたわず いつものようにドアを半分あけといてくれ そこから青い海が見えるように いつものようにオレンジむいて 海の遠鳴りを教えておくれ そこから青い海がみえるように かつて君が遊んだ青い…

Edesu29、こころ、それは故郷

鉛筆、色紙 こころ、それは故郷の通り「故郷ごころ」もいいが、まずはこの坂、無縁坂で。この坂が無縁なら、あの坂は、ん、たまらん、とか。国立から国分寺に抜ける通称、多喜窪通りにある坂で、忌野清志郎に縁のある坂である。RCが歌う「多摩欄坂」はまた…

ご挨拶とデザインの変更について

「蜂太郎日記」ご覧いただきありがとうございます。 暑い日がようやくおさまり、過ごしやすい今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。世知辛い世の中ではありますがせっかくのこの季節です。若い方は若いなりに、年配の方は無理をなさらずそれなり…

時代22、こころ、それは先生(2)

RCサクセションと森昌子の最終回 この明治の精神は「先生」ばかりでなく、漱石にとっても重要な意味を持っていた。漱石はその殆どを明治の時代に生きた人である。前述の先生の言葉「その時私は明治の精神が天皇に始まり天皇に終わったような気がしました。最…

時代21、こころ、それは先生(1)

時代17、18、19の続き、RCサクセションと森昌子の最終回その1 阿久悠は「先生」を「せんせい」と書き直して少女っぽい抒情を感じたと言い、そしてこうした童画風色合いの抒情詩は何とも心もとなく頼りないものであったと言う。しかし、その詞に感じられた少…

Edesu28、天上の伎楽

鉛筆 ヴィデヤーダラはインドラ神に従うインド神話伝説上の妖精たちで、空中に住み、天上の伎楽を司る存在であったという。密教においては「持明者」と漢訳される超自然的な叡知と超能力を備えた半神半人の存在で、しばしば真言行者と同一視される。その意思…

Edesu27、川崎の風

鉛筆 その真菰。それは「船頭小唄」に歌われたあの真菰である。この歌は抒情に浸る歌ではない。当時の暗い世相を反映している。森繁久弥がひょうひょうと歌っても、底を突き詰めれば庶民のやるせなさや自棄的な風潮が見えてくる。情緒に訴えるのではなく、ひ…

俳句15 真菰繁れる

歌川広重「川崎六郷渡舟」 歌川広重「庄野白雨」 前回、六郷を渡って川崎に着くや否や、ドラえもん電車に話が及び、当時の川崎については触れることができなかった。歌川広重の東海道五十三次より「川崎六郷渡舟」で当時を偲んでいただきたい。そしてもう一…

Edesu26、神の知らぬ情

「草枕」の画家である主人公はなかなか絵が描けないでいる。不思議な女、那美が気になるが、彼女には一つだけ何かが欠けていた。 矢張御那美さんの顔が一番似合う様だ。然し何だか物足らない。物足らないとまでは気が付くが、どこが物足らないのかが、吾なが…

時代一覧(1〜20)

時代1、森昌子の履歴 なし 時代2、森昌子のシングル盤 なし 時代3、40周年 (1)イーグルス「ホテルカルフォルニア」(1976年) 時代4、森昌子の故郷 宇都宮 (1)映画「遠雷」(1981年) (2)森昌子「港のまつり」(1977年) 時代5、望郷 (1)映画…

Edesu一覧(1〜25)

1、哀 愁 森昌子「旅立つ彼」 2、悠 久 ナットキングコール「Mona Lisa」 3、哀 哭 森昌子「生きて下さい愛してください」 4、丹 心 森昌子「いつまでも愛していた」 5、清 廉 森昌子「おんなの海峡」 6、歌 詠 森昌子「早春賦」他 7、凛 呼 森昌子「…

時代20、されど豊饒の日々

阿久悠作詞、出門英作曲による「夕子の四季」は、ドラマチックな旋律はないものの、PPMの「パフ」を思い出させる情緒に溢れる作品である。一ヶ所だけインパクトある言葉が使われてはいるが、それもまた愛嬌で、特段の違和感ではない。 平淡な楽曲であるから…