蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

俳句19 行く春と秋

千住といふ所にて舟をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻の巷に離別の涙をそゝぐ。 行く春や鳥啼き魚の目は泪 これを矢立の初めとして、行く道なほ進まず。人々は途中に立ち並びて、後影の見ゆるまではと見送るなるべし。 (中略) 旅の物うさ…

沈黙(19)完

(19) 日比谷公会堂を皮切りに始まったモデルの全国ツアーは西日本に向かい、予定を順調に消化していました。大阪新歌舞伎座での公演も盛況にうちに終え、来週に松山市民会館での公演を予定している頃に秋葉君からの手紙が届きます。住所には新宿区…と記…

沈黙(18)

ミューアウッズの少女殺人は同じ年頃の少年少女らによるものでした。モデルがサンフランシスコを飛びたった頃にそれは解決したのです。 一緒に遊びにきていた彼らは、数日前のテレビドラマを真似て悪戯を始めたらしいのですが、止める頃合いを知らず、ドラマ…

沈黙(17)

「モデル君の元気も戻ったようだ」 「ええ、そのようですね」 「しかし、あそこで我々の名を呼ぶとは。会場の人より私が驚いた」 「それで思わず立ち上がってしまった?」 「大人げもなくはしゃいでしまった」 「まあ、いいじゃないですか。しかし、彼女は気…

沈黙(16)

モデルが探偵に疑惑を持ったと聞いて、私は遅ればせながら「飯坂殺人事件」を読むことにしました。そして書いたのが前回の「沈黙(15)」です。これを読まずに「沈黙」を書いてきたのですからいい加減にも程があるというものです。その時、ふと、あの絵が誰…

沈黙(15)

色鉛筆 部屋の中まで射し込んでいた午後の日射しが消え去ると、間もなく薄墨を流して迫る黄昏の暗い影が忍んできます。モデルの胸奥に突然湧き上がった黒い雲は、その迫り来る暗い影と同じで、時間が経つごとにその暗さを増していったのです。それは「飯坂殺…

手紙18 時間をください

「秋葉君の手紙」(「沈黙」) 先日は挨拶もせず失礼いたしました。実はニューヨークで思った以上に時間を食ってしまい、長居する時間がなくなってしまいました。あなたが元気なことや、その日はマリアと一緒にモントレーに出かけていることなどはジュディか…

手紙17 残念ながら

「乱穂先生の手紙」(「沈黙」) モデル君、お手紙拝読いたしました。カルフォルニアはあなたに合っていたようで、元気な様子が見てとれます。 秋葉君のことですが、行く前に彼から話がありましたから、大方のことは知っております。無事解決されたようで、…