蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

松葉の流れる町(5)

温泉神社から戻って数日がたった頃にみどりからの手紙が届いた。みどりとつぐみは宇都宮で小学校から高校までずっと同じ学校に通った幼馴染で、つぐみがデビューして都内の高校に移ってからも互いの近況を知らせあう程の仲良しだった。二人ともこの3月に高…

松葉の流れる町(4)

その奉納の舞が終わるまでがつぐみの「別れの一本杉」を練習する時間だった。歌詞が不明のまま「歌ってみましょうか」と答えたのは「演歌だろうがフォークだろうが、歌謡曲、学園ポップス、何でもOKだよ。なんでも得意だから任せてくれ」と常日頃から言う壬…

16、森昌子 赤い糸の思い出

悲しみ隠し桟橋に虚ろに影を映す時、誰でも人は寂しさに見えない糸を見るという。夢を失くした青春を海の暗さに散らしても、それでも人は小指から見えない糸が出るという。それはあそこのあの窓に明かりのついたあの窓に、きっとつながる赤い糸。 遥か彼方の…

松葉の流れる町(3)

「『別れの一本杉』を歌ってくれませんか。多分、皆喜ぶと思います。その曲とこの場所とは縁があるんです」 つぐみが1回目のステージを終え、控えのテントに戻るのを入口で宮司が待っていた。 「えっ、『別れの一本杉』ですか。曲は決まっていますから、難…

松葉の流れる町(2)

翌日、つぐみは栃木県北部の小さな町の神社で、その春祭りの舞台に立った。毎年4月の例大祭がその地域最大の行事で、山車が町中を巡り、主会場の境内には多くの出店が並び、他にも流鏑馬や演芸会等が催される。そして最上部の神楽殿では太々神楽と獅子舞が…

松葉の流れる町(1)

1章 窓の外で湿気を失った木の梁が収縮する時の乾いた音がした。光を求める昆虫が窓ガラスに当る音だった。闇の世界から見れば、僅かな白い光でも類まれなる危険の予知能力を忘れさせるほど魅力的に写るのだろう。二元進化の一方の極にいるといわれる昆虫の…

「松葉の流れる町」について

小説「松葉の流れる町」はカテゴリー「手紙」を文章で繋いで小説としたもので、1976年4月にその物語は始まります。登場人物は「手紙」と同じで、主人公一条つぐみはデビュー3年目のまだ脚光を浴びない下積み中の演歌歌手。恋人は外交官として外国に赴…

森昌子私論 目次

現在までの「森昌子私論」を整理すると次のようになります。 1章 挑戦の時 1-1少女森昌子の挑戦(1) 1-2少女森昌子の挑戦(2) 2章 天才の頃 2-1森昌子 明日を夢みて 2-2森昌子 天使たちの翔き 2-3森昌子の原点「南国土佐を後にして」 2-4美空ひばりの…

手紙8 座禅草の里

「小山みどりの手紙」 雅子ちゃんお久し振り。この間偶然ステージを見ました。栃木県北部の小さな町の神社でです。私はその町へキバナノアマナとヤブサンザシという野草を探しに行っていたのです。その町の奥に雲巌寺という寺があって、その辺りでは4月頃に…