蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

Edesu27、川崎の風

鉛筆

 その真菰。それは「船頭小唄」に歌われたあの真菰である。この歌は抒情に浸る歌ではない。当時の暗い世相を反映している。森繁久弥がひょうひょうと歌っても、底を突き詰めれば庶民のやるせなさや自棄的な風潮が見えてくる。情緒に訴えるのではなく、ひたすら鬼気迫る歌唱を貫いた森昌子の歌が印象深い。若いが故になせる業なのだろうが、その一途さが、枯れた真菰に反射する鈍い月明かりに鬼神の気配を漂わせる。
 そして、北の風。北の風は暖かい。万年屋の若い二人に川崎の風は暖かく吹いたのだろうか。


森昌子「船頭小唄」
http://youtu.be/NsoO72IHPCE
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  • 真菰はイネ科マコモ属の多年草。別名は花勝美。
  • 学名:Zizania latifolia L.
  • 和名:マコモ(真菰)、ハナガツミ(花勝美)
  • 英名:Manchurian Wild Rice 

 かって日本の至る所で刈り取りの風景が見られたろう真菰は、ススキより地味な植物ではあるが、「古事記」、「日本書紀」、「万葉集」などに記述があるように、古来より重要な植物であった。茅の輪やしめ縄などの神事用、盆ござ、精霊舟などの仏事用として使われ、他にも、生活用品として莚や蓑に利用された。また、芽、肥大茎や実は食料にもなったし、肥料や飼料としても利用された。ただ栽培用植物にとは考えられなかったため、常に野生のままだった。このような事情から、真菰は野生植物から食用作物への過渡期の初期段階にあるといわれる。