俳句26 かまいたち
はんざきの傷くれなゐにひらく夜(飯島晴子)
これは確かに女のものだ。情念に満ちている。男にこうした句は作れない。可愛いい顔をして、しおらしい振りをして、しかしその体の奥深くにメラメラと炎を立てている。ブランコを無心にこぐ少女に鷹女の句を重ねる時、やはりこうした思いに駆られる。
はんざきとは大山椒魚の異名。半分に引き裂かれてもまだ生きていることからこの異名がある。この生命力に普段は見せない女の情念が重なり、その凄まじさにドキっとする。これは確かに男の作ではない。女のものだ。
男の私にこんな句は作れない。いや、素人であるからだが。それでも強引に行く。…ほら後ろ、あなたの後ろに何かががいる。振り返ったほうがいい…ゆっくりと…。
裳裾裂き血肉鮮やかかまいたち
かまいたちとは冬の信越地方に多く発生したといわれる気象現象。気象の状態によって大気中に真空域ができ、その端に触れると皮膚などが裂けるという。