蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

神3、「ダナエ」



クリムト「ダナエ」1908年(個人蔵)


 アルゴス王アクリシオスの受けた神託「汝に息子は生まれないが男の孫が生まれる。その孫に汝は殺されるだろう」が、このダナエの物語の始まりだった。神託を恐れアクリシオスは、男が近づけないよう娘を塔(地下室)に閉じ込めてしまう。しかし美貌のダナエをゼウスが見逃すはずはない。ゼウスは黄金の雨に身を変えてダナエの元に忍び込む。その結果、ダナエは英雄ペルセウスを生むのである。
 オリンポス神族と人類双方の守護神・支配神である全能の神ゼウスはまた手も早い。神、人間をとわない。手当たり次第である。さすが神の中の神と言われる所以か。後にペルセウスを助けるハデスは兄であるが、アテナやヘルメスはゼウスの子である。ペルセウスにとってハデスは伯父、アテナとヘルメスは腹違いの兄弟である。少し違うのは、彼ら3人は神であるがペルセウスは半神の身であることだ。
 そのペルセウスはセリポス島で成長するが、その地を母ダナエに恋慕した領主ポリュデクテスによって、メドゥーサ退治を口実に追い出されてしまう。ペルセウスはアテナ、ヘルメス、ハデス等の援助を受け、アテナの楯、ヘルメスの翼のあるサンダル、ハデスの隠れ兜を身に付けてメドゥーサを退治する。その帰路を飛行中に、母カシオペアのために海神ポセイドンの怒りをかって生贄にされかけていたエチオピアの王女アンドロメダを見かけ、海の怪獣を倒して彼女を救う。そしてアンドロメダと結婚しセリポス島に戻ったペルセウスは、ポリュデクテスにメドゥーサの首をつきつけて石にし、恩義あるディクテスを新たな王に就けるのである。
 その後、ペルセウスは妻や母と共にアルゴスに帰国することになるが、この噂を聞いたアクリシオスはアルゴスを離れる。自分を殺すであろう孫を殺さず、娘と共に海に流したアクリシオスは孫との戦いを避けたかったのかもしれない。

 帰路の途中、ペルセウスがある競技会に参加して投げた円盤がひとりの老人に当たり、その老人は死亡する。その老人こそかつてのアルゴス王、ペルセウスの祖父アクリシオスだった。これを知ったペルセウスは自分が殺してしまった祖父の国を継ぐのを恥じ、ティーリンスの王メガベンテスと国の交換を行い、ティーリンス、ミデア、ミケナイの王となったという。
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ダナエ:父アルゴス王アクリシオス、母はエウリュディケ。ギリシャ神話に登場するアルゴスの王女。
ゼウス:父クロノス、母はレア。ギリシャ神話の主神たる全能の存在。社会秩序、天候、特に雷を司る天空神でもあり、オリンポス十二神をはじめとする神々の王。オリンポス神族および人類双方の守護神・支配神であり、神々と人間たちの父と考えられた。ティタン神族のクロノスとレアの末の子で、ハデスやポセイドンは兄であり正妻ヘラは姉であるが、他にも多くの女神や人間の女性と交わり子をもうけている。ローマ神話ではユーピテル(ジュピター)
ペルセウス:父ゼウス、母はダナエ。神と人間の間の子。半神である。
アテナ:父ゼウス、母はメティス。オリンポス十二神の一柱で、知恵、芸術、工芸、戦略の神。永遠に純潔を守る処女神。パルテノンはアテナに捧げられた神殿で、処女の部屋を意味する。パリスの審判で、ゼウスの妻ヘラや美の女神アフロディテと美しさを争う。ローマ神話ではミネルバ
ヘルメス:父ゼウス、母はマイア。オリンポス十二神の一柱で、旅人、泥棒、商業、羊飼いの神。また眠りや冥界とも関係があり、オルへェウスが妻エウリディケを冥界から連れ出そうとした際に同行した。ローマ神話ではメリクリウス(マーキュリー)。
ハデス:父クロノス、母はレア。ゼウスの兄。ギリシャ神話の冥府の神。ゼウスと異なり逸話が少ないが、際だっているのがペルセポネ略奪の話である。ペルセポネ(コレ)はゼウスと豊穣の女神デメテルの娘で、デメテルと共に二柱の女神とも呼ばれ、冥府の女王としてハデスの傍らに座すとされる。