蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

手紙11 In Wildness Is the Preservation of the World

「小山みどりの手紙」
 雅子ちゃん、お久し振り。少し暑くなってきましたが、いかがお過ごしですか。体を壊さないよう、大事な喉を痛めないよう気をつけて下さい。
 私、この前、参考書を探しに本屋さんへ行ったのですが、気晴らしに眺めていた植物関係のコーナーで気になる本を見つけました。「In Wildness Is the Preservation of the World」(直訳すれば「世界の存続は野生の中に」となるのでしょうか)と題されたエリオット・ポーターの写真集です。アメリカの田舎の森や沼地の写真なのですが、その中に植物の写真もあり、座禅草の写真もありました。ソローの文章を選びそれに合う写真を撮ったものらしいのですが、座禅草の頁にはこう書いてあります。
「私は驚かされた。スカンク・キャべジの大きな芽が開いて、花が咲こうとしているではないか。…春は前進している。氷や雪や、寒ささえ残っているというのに」
 自然を愛したソローの「ウォルデンの森」のまだ失われていない野生を、ポーターはその百年後に実写化して見せてくれます。「あなたの写真はソローの文章に似ている」との妻の言葉に、ポーターはソローの文章に興味を持ち、それに合う写真を撮ったのだそうです。
 私もソローの文章とポーターの写真を見るとジンと来るものがあります。私もまた地面に生えてない花など愛せませんし、草花の生えない土地をも愛せません。未熟ですからソローのように徹底はしておりませんが…。そして、雅子ちゃん、私は勝手にあなたの歌の中にその野生を見ています。あなたの歌は愛されてしかるべき歌であると思っています。頑張ってね、また手紙書きます。
1976年
みどり
雅子ちゃんへ
追伸:両親が北大への進学に難色を示してます。宇大の農学部になりそうです。