蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

手紙3 竜胆の里(1)

「ある大学生のはがき」

前略 先日はありがとうございました。皆さん元気そうで安心致しました。私も山の空気を吸って、少し元気になったような気がします。都会の雑踏の中にいると、田舎の風景はやはり懐かしく思い出されます。東京はまだまだ暑い日が続きますが、そちらはもう随分過ごしやすくなったのではありませんか。帰る頃には蕾も膨らんで、今にも咲き出しそうでしたが、竜胆はもう咲いていますか。また近いうちにお邪魔します。体に気をつけてお過ごしください。叔母さんにも宜しくお伝えください。草々
1971年初秋
達彦
叔父上様
追伸:療養所の少女に詩集を渡してあるのですが、いつか会うことがあったら、返さなくてもいいと伝えてくれませんか。ぼくにはもう必要のない本ですから、宜しくお願い致します。
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これはフィクションです。内容は時系列に従わず、その時折々に、断片的にアップされます。(蜂)