蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

他9、「二十歳の原点」高野悦子

 

 最近、本屋さんに行き「二十歳の原点」が広いスペースをとって並べられているのを見てちょっと驚いた。2009年4月にカンゼンから新装版が発行されていた。1971年の風景のひとつとして前記「少女森昌子の挑戦」(1)の中にも本書名を記したが、若い頃の私はどうしてもこの本を読むことができなかった記憶がある。「独りであること、未熟であること…」はあの頃の若者の共通した感覚であったのかもしれない。
 高野悦子さんは森昌子さんの故郷、宇都宮の女子高の卒業生である。これも何かの縁と思い、略歴と当時の新聞記事を紹介することにした。
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高野悦子略歴
1949年1月2日 栃木県那須郡西那須野町(現那須塩原市)生まれ
1953年   4歳の頃、心臓弁膜症の診断を受ける
1955年4月  西那須野東小学校入学
1961年4月 西那須野中学校入学
1963年1月 日記を書き始める
1964年4月 栃木県立宇都宮女子高等学校入学
1966年1月 「青春の墓標」(奥浩平)を読む
1967年4月 立命館大学文学部史学科入学
1967年5月 部落研究会入部
1968年4月 部落研究会退部
1968年5月 ワンダー・フォーゲル部入部
1969年1月 全共闘運動に参加
1969年3月 京都国際ホテルでアルバイト(ウエイトレス)
1969年6月24日 未明に鉄道自殺
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高野悦子著書
二十歳の原点」1971年5月10日発行
1969年1月2日〜1969年6月22日(立命館大学3回生)
二十歳の原点序章」1974年6月20日発行
1966年11月23日〜1968年12月31日
宇都宮女子高校3年生〜立命館大学3回生)
二十歳の原点ノート」1976年1月10日発行
1963年1月1日〜1966年11月22日
(西那須野中学2年生〜宇都宮女子高校3年生)
二十歳の原点」文庫・1979年5月25日発行
二十歳の原点序章」文庫・1979年12月25日発行
二十歳の原点ノート」文庫・1980年4月25日発行
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京都新聞(夕刊)記事 1971年6月12日付
 とにかくよく売れている。いや正確には売れたというべきだ。先月中旬に発売されるやたちまち売り切れてしまい、もうどこの本屋へ行ってもないからである。出版社では大急ぎで増刷中だ。
この本―高野悦子著「二十歳の原点」。一昨年、立命大の三回生に在学中、起こった学園紛争に全共闘派の一人として参加、闘争の最中に自殺した下宿に遺していた日記である。ノンポリからやがて心情三派にそして全共闘派へとのめり込んで行く中で起こった家族との決別、アルバイト先での恋愛、そして怒りと孤独と・・・平凡な一女子学生が紛争の中で死へとたどった軌跡が生々しくえがかれている。これが同世代の若者の共感を呼ぶのか、買っていくのは学生が圧倒的に多いという。


 本が出たのが5月10日である。もう京都の書店にはどこにもない。丸善では50部仕入れたが4日ほどの間に全部売り切った。京都書院でも160部がすぐ売れてしまい、その期間の同店でのベストセラーのトップになったし、学生専門書店として有名な京大正門前のナカニシヤ書店でも最初に仕入れた50部がうれ、あわてて追加注文したもう50部もすぐさばけてしまった。5月末の同店では高橋和巳の「わが解体」、柴田翔の「立ち尽くす明日」と並んでベストセラーの第2位になった。「ええ、その後もお客さんから問い合わせがたえないので出版元へ何度も注文をしているんですが、品切れだそうで。増刷中のが今月中旬には出来るらしいので、出来たらすぐ送ってくれるよう頼んでいます」(丸善)という調子である。(はげましのお声、ないしは罵詈雑言ノーマル版投稿より)