蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

神4、「我が子を喰らうサトゥルヌス」



ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」1820年頃(プラド美術館


 ローマ神話に登場するサトゥルヌスは農耕神で、大きな鎌を持つ老人の姿で表わされる。ギリシア神話のクロノスと同一視され、この絵はそのクロノスである。クロノスは我が子に支配権を奪われる不安にかられ、生まれた子供を次々に飲み込んでしまう。それはクロノス自身も父ウラノスを殺して権力の座についており、同じように息子たちに殺されるとの予言があったからだ。
 クロノスが天空神ウラノスを去勢して支配権を奪った頃、ゼウスはまだ生まれていない。父を倒したあとに姉妹のレアを妻として、ヘスティアデメテル、ヘラの3人娘と、ハデスとポセイドンの2人の息子をもうけるのである。そして予言を恐れこの子らを喰らうのである。この絵は娘のようなので、ヘスティアデメテル、ヘラの誰かだろう。


 末の子ゼウスを生んだレアは、赤子の代わりに産着で包んだ石をクロノスに飲ませることで我が子を救う。そして成人したゼウスは、クロノスに兄弟たちを吐き出させ、彼らと協力してクロノスらのティタン神族を冥界タルタロスに葬るのである。予言の通りクロノスは息子に倒され、時代はティタン神族からオリンポスの神々へと移る。

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クロノス:父ウラノス、母はガイア。ティタン神族の黄金時代に地上を統べた王。農耕神とする伝承もあり、収穫祭で盛大に祀られた。ローマ神話ではサトゥルヌス(サターン)。
レア:父ウラノス、母はガイア。ティタン神族の一柱で大地の女神。クロノスからゼウスを守ったゼウスの母。

ウラノス:母はガイア。天空神であり、全世界を最初に統べた神々の王。また、キュクロプスヘカトンケイルウラノスとガイアとの子だが、ウラノスはその醜怪さを嫌いタルタロスに幽閉してしまったという。これに怒ったガイアは末子クロノスに命じて、魔法の金属アダマスで作られた鎌でウラノスの男性器を切り落とさせた。一説では、この時、海を漂流したウラノスの陽物の周りの泡から生まれたのがアフロディテであるという。ローマ神話ではウラヌスまたはカエルス。
ヘスティア:父クロノス、母はレア。オリンポス十二神の一柱で炉の女神。ヘスティアの代わりにディオニソスを数えることもある。クロノスとレアの長女であり、したがってゼウスの姉。夫や子はなく処女神とされる。ポセイドンとアポロンに求婚された事もあるが、ゼウスにすがって永遠の処女を守る許しを得たという。ローマ神話ではウェスタ
デメテル:父クロノス、母はレア。オリンポス十二神の一柱で、大地、豊穣の女神。神々の始祖である地母神ガイアの後継神であり、弟ゼウスとの間にペルセポネをもうけている。ローマ神話ではケレス。ケレスは穀物(cereal)の語源。
ヘラ:父クロノス、母はレア。オリンポス十二神の一柱で、家庭、母性、貞節の女神。ゼウスの姉であり正妻でもある。ヘラの母乳は飲んだ人間を飛躍的に強化し不死身にする力があり、ヘラクレスはこれを飲んで驚異的な怪力の持ち主となった。ヘラクレスはヘラの子ではないがヘラの名声と言う意味の名を与えられている。ローマ神話ではジュノー。
ポセイドン:父クロノス、母はレア。オリンポス十二神の一柱で海の神。ハデスの弟でゼウスの兄。実力があり、一度はヘラとアテナの力を借りてゼウスを縛り上げ、オリンポスから追放しかけた事があった。またゼウスと同じくらい好色で、姉のでデメテルに惚れたり、怪物になる前のメドゥーサを愛人としていた事もある。ローマ神話ではネプチューン