蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

手紙6 少年時代(2)

「ある母親の手紙」

 元気にしてますか。お母さんを心配してくれてありがとう。お母さんは元気です。毎日、元気に仕事に行っています。職場の人たちも色々と気を遣ってくれていますから、大丈夫です。子供だと思っていましたが、色々と考えていたのですね。少しづつ大人になっていたのですね。だけど、あなたの考えた正しさと、大人の考える正しさとは少し違うのかもしれません。


 あの人の言ったことはお母さんには良く解りませんが、あなたにはあなたの考える正しいことをやって欲しいと思っています。しかしそのあなたの正しさと世間の正しさが違った時、お母さんは世間の正しさが本当だと思います。それも良く考えてください。
 お母さんは騙す人より、騙される人のほうが好きです。あなたにも人を騙すような人間になって欲しくはありません。そして、他人に対する優しさも忘れないで下さい。あなたの優しさがあの野良犬には分ったのかもしれません。
 少し大人になってきたあなただから言いますが、我慢することも大切です。大人になれば成るほど、それは大切になります。それも良く考えてください。
 保護士の方が何度も来てくれて、あなたの様子を教えてくれます。あなたが元気にしていると聞くと、少し安心します。保護士の方に感謝したい気持ちになります。お母さんは、なかなか会いに行くことができず、申し訳ないと思っています。だけど、お母さんは、いつだってあなたを待っています。いつまでだって、あなたを待っています。


 今年の夏は暑いそうだから体をこわさないようにして、元気にするのですよ。先生方の言うことを良く聴くのですよ。そして、必ずお母さんの許に帰ってくるのですよ。
1976年

勝へ