蜂太郎日記

森昌子を聴きながら・・・

俳句18 鈴ヶ森


 以前に、森昌子左とん平のコント「鈴ヶ森」がYoutubeに流れていた。歌舞伎「浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」の第五段、白井権八と幡随院長兵衛の出会いの時で、江戸へ向かう途中の鈴ヶ森で、お尋ね者白井権八と雲助たちの立ち回りがあり、雲助たちを切り捨てた権八に駕籠から見ていた幡随院長兵衛が声をかけるという場面だった。
 鈴ヶ森には江戸三大刑場の一つ鈴ヶ森刑場があり、後に権八はここで処刑される。そして愛妾小紫は権八の墓前でその後を追う。今でも刑場は縮小されてはいるが残されており、権八と小紫の霊と弔う比翼塚は目黒不動尊に建てられている。その第五段「鈴ヶ森」である。
 Youtube上の動画から文字を起こしたので、何ヶ所か怪しいところがありますが、その「浮世柄比翼稲妻」第五段「鈴ヶ森」。


長兵衛「お若えの、お待たなせいやし」
権 八「待てとおとどめなされしは、手前がことでござるよな」
長兵衛「さようでごぜえやす。鎌倉方のお屋敷へ、多く出入りのわしが商売、それをかこつけ有りようは、遊山半分江ノ島や、片瀬をかけておとついから、つい神奈川でずるけだし、どうで泊まりは品川と、川端からの帰り駕籠、通りかかった鈴ヶ森、お若えお方のお手のうち、あまり見事と感心いたし、思わず見とれておりやした。お気づけえのもんじゃあごぜえやせん。まァ、お刀、お納めなせえやし」
権 八「こぶしもにぶき生兵法、お恥ずかしう存じまする」
長兵衛「お見受け申せばまだ、ご前髪のお侍さん。お一人旅でございやすか。して、どれからどれへ、お通りでごぜえやす」
権 八「ごく親切なるそのお尋ね。ご覧の通り拙者めは、かって存ぜぬ東路へ、中国筋よりはるばると、うれいに及んで磯端に、一人旅とかあなどって、無礼過言の雲助ども、彼らはまさしく追い落とし、命を取るも殺生と、存じたなれどつけ上がり、手向い致す不敵もの、刀の穢れと存ずれど、行き来の人のためにもと、よんどころなくかくのしあわせ。雉子も鳴かずばうたれまいに。…」

権 八「長兵衛殿」
長兵衛「権八どん」
権 八「ゆるりと江戸で…」
二 人「会いましょう」


 海棠のみだれや先に鈴ヶ森



 季節は違ってしまったが、もう直ぐ春も来るだろう。春の嵐に大きく揺れては小刻みに震える爛漫たる花海棠。そこには無数の命が群がっているように見える。
 鈴ヶ森刑場では白井権八のモデル平井権八の他にも、丸橋忠弥、天一坊、八百屋お七白木屋お駒、鼠小僧次郎吉等が処刑されているという。